「悲しんだ」「狼狽」「思いぞ屈せし」「深い嘆息」・・・思わぬ幽閉に気づいた山椒魚の「心情語」です。正式の『山椒魚』となって昭和4年(=小林多喜二『蟹工船』や島崎藤村『夜明け前・第一部』が著された年)世に問われるまでの約10年間、実は作者自身の境遇や精神状態も、まさにこのありさまだったのです。
「大学での指導教授との不和」「休学」「帰郷」「復学してすぐに退学」「親友の急逝(きゅうせい)」「関東大震災」「三度の入社・退社」「可愛がってくれた祖父の死去」など・・・なるほど、外の様子は垣間(かいま)見えるが出口が小さくて出られない岩屋に相応(そうおう)しています。
ただ、その渦中(かちゅう)でも光明(こうみょう)や覚悟はありました。「小説家としての始動」「同人や師匠との交わり」「節代夫人との結婚」など・・・「いよいよ出られないというならば、俺にも相当な考えがあるんだ」という山椒魚の呟(つぶや)きに当て嵌(は)めてもいいのです。
「ほの暗い場所から明るい場所をのぞき見する」「小さな窓からのぞき見するほど、常に多くのものを見ることはできない」・・・山椒魚に許されたわずかな希望や安息は、多分に作者にとっては自身の小説世界そのものの特異性と重なっていたに違いありません。
時代背景とともに左傾化(左翼・共産主義的傾向になってゆくこと)する周囲の文筆家達のような「イデオロギー=(主に政治的な)思想・主義主張」を持たず、プロレタリア文学(労働者階級・社会的弱者や貧者の立場で書かれた文学、プロレタリア⇔ブルジョア、プロレタリアート⇔ブルジョアジー)的な現実描写をどうしてもしたくなかったのです。
だから、時流に乗ってゆくことに対しては、めだかの一群に喩(たと)えて、「彼等のうちの或る一匹が誤って左によろめくと、他の多くのものは他のものに後れまいとして一せいに左によろめいた」と巧みに皮肉(ひにく)っています。「なんという不自由千万な奴らであろう!」と、嘲笑(ちょうしょう)的な他者批判もぶつけるのです。
また、小蝦(こえび)が「何か一生懸命に物思いに耽(ふけ)っていた」ことに対して、山椒魚が「くったく(屈託)したり物思いに耽ったりするやつは、莫迦(ばか)だよ」としているのは、作者自身や作品世界の「表裏二面性」なのでしょう。
こうして、山椒魚は「今にも気が狂いそうで」「もはやがまんがならない」「やくざな身の上で」「ブリキの切屑(きりくず)」となってしまうのですが、これも一時期辿(たど)りついた作者の自画像と解することができます。
【NP解析では、「序論」を素材=キーワードorモチーフ(重要素材・中心動機)で、「本論・前半」を具体=例示orサンプルor展開で、それぞれ捉(とら)えています。】
「大学での指導教授との不和」「休学」「帰郷」「復学してすぐに退学」「親友の急逝(きゅうせい)」「関東大震災」「三度の入社・退社」「可愛がってくれた祖父の死去」など・・・なるほど、外の様子は垣間(かいま)見えるが出口が小さくて出られない岩屋に相応(そうおう)しています。
ただ、その渦中(かちゅう)でも光明(こうみょう)や覚悟はありました。「小説家としての始動」「同人や師匠との交わり」「節代夫人との結婚」など・・・「いよいよ出られないというならば、俺にも相当な考えがあるんだ」という山椒魚の呟(つぶや)きに当て嵌(は)めてもいいのです。
「ほの暗い場所から明るい場所をのぞき見する」「小さな窓からのぞき見するほど、常に多くのものを見ることはできない」・・・山椒魚に許されたわずかな希望や安息は、多分に作者にとっては自身の小説世界そのものの特異性と重なっていたに違いありません。
時代背景とともに左傾化(左翼・共産主義的傾向になってゆくこと)する周囲の文筆家達のような「イデオロギー=(主に政治的な)思想・主義主張」を持たず、プロレタリア文学(労働者階級・社会的弱者や貧者の立場で書かれた文学、プロレタリア⇔ブルジョア、プロレタリアート⇔ブルジョアジー)的な現実描写をどうしてもしたくなかったのです。
だから、時流に乗ってゆくことに対しては、めだかの一群に喩(たと)えて、「彼等のうちの或る一匹が誤って左によろめくと、他の多くのものは他のものに後れまいとして一せいに左によろめいた」と巧みに皮肉(ひにく)っています。「なんという不自由千万な奴らであろう!」と、嘲笑(ちょうしょう)的な他者批判もぶつけるのです。
また、小蝦(こえび)が「何か一生懸命に物思いに耽(ふけ)っていた」ことに対して、山椒魚が「くったく(屈託)したり物思いに耽ったりするやつは、莫迦(ばか)だよ」としているのは、作者自身や作品世界の「表裏二面性」なのでしょう。
こうして、山椒魚は「今にも気が狂いそうで」「もはやがまんがならない」「やくざな身の上で」「ブリキの切屑(きりくず)」となってしまうのですが、これも一時期辿(たど)りついた作者の自画像と解することができます。
【NP解析では、「序論」を素材=キーワードorモチーフ(重要素材・中心動機)で、「本論・前半」を具体=例示orサンプルor展開で、それぞれ捉(とら)えています。】