2012センター国語の古文・漢文において、問3もしくは問4に注目してみましたか?そこに「抽象」という重要素を見出すことが出来たでしょうか?それは、そこまでと、そこからとの「関係性」(繋がり・連鎖)を物語っていたでしょうか?
古文の平均点が予想外に低かったようですね、センター側は、あれほどの問題文章・字数減で「易化」を目論(もくろん)だはずなのに・・・。おそらくは、この「関係性の見落とし」だと思われます。漢文は逆に、問7の出現に驚きながらも、「抽象」なるものが分かりやすかったのでしょうね。2013の予想や対策を、来たるべき「危急存亡の秋(とき)」には、的確に展開します、期待して下さいね。


『近代文学入門』(双文社出版)より、山椒魚・解説①「序論」
 
 大正八年(1919年)21歳の夏、故郷の広島・福山にて、早稲田大学文学部・フランス文学科1年の本名・井伏満壽二(いぶしますじ)は、「幽閉」という題名の習作(練習や試みのために作った作品)を認(したた)めます。これが、後に名小品(めいしょうひん)とされ、現在の高校教科書にも採用され続けている『山椒魚』の原型です。
 
 激動の時代が過ぎてゆき、人の思いや暮らしの向きが変わり、作者自身も平成5年に天寿を全(まっと)うしました。が、70年以上の長きに渡って『山椒魚』は、その都度(つど)「現代的」であったと思われます。それは「幽閉」という原題にこめられた「人間性の閉塞的状況」が今も昔も変わらず、「擬人・象徴・暗喩性」に富むことが要因でしょう。しかしここでは、さらにもっと作者自身に投影する読み方を示しましょう。

【NPがずっと前に書いた解説文を、今回文体を変え(常体→敬体)、このコーナー用に加筆編集しました。新作同然、続きます。是非、『山椒魚』自体(古い文庫本の方がよい)を一読して、合わせて読んでみて下さい。】