【 霹靂(へきれき) 】

運河と水上生活者居住区から程良く離れたリバーサイドに☆☆ホテルはあった。
連中が戻って、その夜のオプションである「わくわくパーティ」が始まる頃、街は突然の雷雨に見舞われた。

ここではよくあることだ。
それもまた集いの胡散臭(うさんくさ)さに花を添えてくれるだろう。

GOING UP?
エレベーターの前で、うろうろ迷っている男に声をかけると、YES,YES,YES。
まったくもう。

最上階の展望は、かなりの広角ビューだ。夜景でも有名なこの街は今、闇の帷(とばり)の中に光とシャワーが乱舞交錯している。

お似合いの遊山(ゆさん)客たちの中に溶け込んで彼はいた。


《 悠遠 》

360度の蒼穹(そうきゅう)の下、白い細粒の砂浜が、遥か遥か拡がり伸びていた。
気紛れな新婚らしきカップルが、WHERE YOU FROM?

WE WANNA FORGET......
私たちは、残念だけどあなたたちとは違うのよ。
虫が蛹(さなぎ)になり、とうとう動かないままに終わってしまうことがごく稀(まれ)にあるように、止まってるのよ。

でも、何かを捜しに来たんだよね。
そんな眼差しを交わそうとするが、視線は離れて、蜃気楼(しんきろう)のような水平線に泳いだ。

焦げつくほどではない、心地よい南の島の冬のサンドの熱さを感じながら、どこまでも歩いた。

いっしょに・・・いつあなたはいなくなったの・・・。
そして、いなくなったあなたの代わりに彼女がいたの、そこに。