現在、
中学2年生で【構造主義的ガクシュウ】授業を展開しています。
計3時間(作家と文学史・時代背景の別プリント作成配布予定) 実施分で、
朗読劇・全七幕の区切りを①~⑦と表記しています。 
《朗読劇》
①街なかのメロス
②王城にて
③帰郷と妹結婚式
④出発と油断・試練
⑤メロスの挫折 
⑥希望・勇気・再起
⑦友情・王様万歳!

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【 太宰治「走れメロス」構造主義的ガクシュウ 20162 NP国語演習 

 

語彙力(心情的抽象熟語に特化)


【(-)マイナス語から、(?)保留語を経て、(+)プラス語への変遷】

(-)①激怒・暴虐・邪悪・悪心・乱心・派手 ②孤独・嘲笑・私欲・残虐 ③疲労困憊・不吉・未練 
④茫然 ⑤不信・疑惑・卑劣・不名誉 ⑥悪魔 ⑦空虚・妄想

 

(?)①決意・敏感 ②単純・威厳・憫笑・反駁・覚悟・必死 ③無理・頑強・呆然・秘密 
   ④哀願 ⑤合点 ⑥仰天 ⑦赤面

 

(+)①律儀 ②忠誠 ③陽気・喜色・歓喜・夢見心地 ④信実・悠々・名誉・獅子奮迅・憐 
⑤正義・猛然・無心 ⑥疲労回復・希望・義務遂行・期待・信頼・勇者・
正直・平気・信念・死力 
⑦抱擁・仲間・歓声・万歳

 

読解力

 a構造構成(全七段落の微分読解で考察、時場人物事情に着目)

【起】①起承②転結 【承】③起承④転結 【転】⑤起承⑥転結 【結】⑦起承転結

 

 b素材(特に「水素材」⇒暗喩象徴的に「変化・流動(の兆し)」を示す)

【起】①なし ②泣いてわびる

 

【承】③黒雲・雨・降る・車軸を流すような・大雨・豪雨・小降り

   ④雨中・雨もやみ・汗・降ってわいた災難・川・水源地・氾濫・濁流とうとうと・下流・橋・激流・
   橋げた・繋舟・波にさらわれて・渡し守・流れ・海のように・川岸・男泣きに泣く・
しずめる・
   荒れ狂う流れ・沈んでしまう・波は波をのみ・巻きあおり立て・
泳ぎ切る・ざんぶと・
飛び込み・
   荒れ狂う波・押し寄せ・渦巻き・引きずる流れ・かき分けかき分け・押し流されつつも・対岸 

 

【転】⑤悔し泣きに・泣き出した・愛と誠の血液(+)・疑惑の雲

  ⑥《転の転》せんせん・水・流れる音・水が流れている・こんこんと・清水・わき出て・泉に吸い
  込まれるように・両手ですくって・一口飲んだ・酒宴・小川・口から血・噴き出た・日は沈まぬ

 

【結】⑦濁流を泳いだように・群衆をかき分けかき分け・目に涙を浮かべて・うれし泣き・おいおい声を
   放って泣いた


小主題連鎖(ライトモティーフ)と大主題(メインテーマ)

【主述連鎖】(各形式段落の冒頭末尾のみ)

①メロスは/激怒した。→ 「(私は王を)/生かしておけぬ。」 

②メロスは/[単純な]男であった。→(メロスは)/[ものも]言いたくなくなった。 
③セリヌンティウスは/[王城に]召された。→(メロスは)/[深く]眠った。

④目が覚めたのは/薄明のころである。→山賊が/躍り出た。

⑤「(おまえは)/待て。」→(メロスは)/まどろんでしまった。

⑥[水の流れる]音が/聞こえた。→(メロスは)間に合った。

⑦「(    )/待て。…」→勇者は/(ひどく)赤面した。

激怒・義憤 挫折・敗北  ヒロイズムへの羞恥と偽善への反発  

正義・友情 信実・勝利  強者への憧憬(どうけい:あこがれ)と弱者の倫理

表面的には「弱肉強食の人間社会へのメッセージ」

裏面的には「富国強兵の国家体制へのアンチテーゼ」

 

表現力

【修辞法(レトリック)=表現技巧…全体的には「心話文」多出】

1メロスは激怒した。/(聞いて)メロスは激怒した。「あきれた王だ。生かしておけぬ。」

2メロスには竹馬の友があった。/竹馬の友、セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。

3その王の顔は蒼白で眉間のしわは刻みこまれたように深かった。

4世の中の、正直者とかいうやつばらにうんと見せつけてやりたいものさ。

5おまえの兄のいちばん嫌いなものは、人を疑うことと、それから、うそをつくことだ。

6他には何もない。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ。

7私は、今宵、殺される。殺されるために走るのだ。身代わりの友を救うために走るのだ。

8ああ、神々も照覧あれ!濁流にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、今こそ発揮してみせる。

9ああ、できることなら私の胸をたち割って、真紅の心臓をお目にかけたい。

10人を殺して自分が生きる。それが人間社会の定法ではなかったか。

11私は信頼に報いなければならぬ。今はただその一事だ。走れ!メロス。

12 …残光も消えようとしたとき、メロスは疾風のごとく刑場に突入した。間に合った。

13生まれて初めて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。

14このかわいい娘さんは、メロスの裸体を皆に見られるのが、たまらなく悔しいのだ。

 

知識力

【太宰治が生きた時代と足跡(別紙参照)】

1909(M42)年~1948(S23)年、玉川上水に遺体が発見されたのは40歳の誕生日619日で、
以後「桜桃忌」。青森県出身で東大・仏文科中退、無頼派・新戯作派の作家。
代表作に『晩年』
『津軽』『斜陽』『人間失格』、高校教科書に「富嶽百景」。
(中2課題図書『パンドラの匣・正義と微笑』)

 

 

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以上をB4プリント一枚に収めています。
本来は、
こうした実践ガクシュウ教材で参考書を作りたかったのですが、
受験用を目論みエッセイ風に頓挫して、
果たせないままになっています。

いつかは必ず・・・、
そう考えています。