村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』は、
第2章冒頭で記されたように「1970年の8月8日に始まり、18日後、つまり同じ年の8月26日に終る。」物語となっています。

一方・・・、

夏目漱石の前期三部作・三作目『門』は、
明治43年つまり「1910年の8月6日に胃潰瘍の療養で修善寺温泉に赴いたが、病状悪化、18日後の8月24日夜には大吐血、危篤状態に陥った」ことへと直結して連載終了しています。

日付・日数の符合は兎も角(ともかく)として、
わずか60年しか経っていないことにあらためて気付かされます。
それぞれの年に、
前者は21歳(作品発表時は30歳)、
後者は43歳でした。


村上春樹は、
主人公「僕」のナレーションとして、
作品の第1章でデレク・ハートフィールドという架空の作家の「不毛な死」と、
二人の叔父の「悲惨な死」について語っています。

そしてその直後に、
僕たちが認識しようと努めるものと、実際に認識するものの間には深い溝が横たわっている。どんな長いものさしをもってしてもその深さを測りきることはできない。」とあります。

漱石であったら、
「僕(僕たち)」ではなく「余(人)」と記したでしょうか。


過ぎ去った「青春への鎮魂歌(レクイエム)」として、
『風の歌を聴け』も、
『門』も読み解くことが出来ます。

それは夏の終わりに読むに相応しいように思えます。


村上春樹はノーベル文学賞・最有力候補作家
そして、
夏目漱石は架空ではなく伝説の大作家です。