今年1月発表の第156回直木賞を受賞したのは、
恩田陸さん『蜜蜂と遠雷』でした。
(7月発表の第157回が佐藤正午さん『月の満ち欠け』)


画像は「NHK俳句9月号」(毎月20日発売)です。
DCIM4729

某男子生徒さん(TPくんかな?)から、
提出物への書き込みで指摘があったので、
能々(よくよく)考えてみた小話(標題の小疑問)を、
やはり載せることにします。

テキスト表紙の左下にありますが、
9月号には、
7月放送分の入選作品が掲載されています。

特選・第一席~第三席の優秀句を初めとする入選9句(TVで既に明らか)と、
全国(海外も)からの応募の何千句(多分)から選ばれた「佳作」の数々(都道府県別に北から南へ並記)とが載っています。


NPもはや応募した(であろう)句を忘れているのですが、
今回も佳作にも入れずです…。
(NPと同じ句会から毎回のように佳作入選のかたの御名を拝見…)






それはそれとして問題は、
「遠雷」という夏井いつきさんの「兼題」でした。

七月第3日曜のNHK・E‐TVを(AM6:35~ですが朝早くとは限りませんビデオやオンデマンドが普通)見た当該生徒さんは、
第二席に入選した、
「蜜を舐めるやうに遠雷は生まれる(神戸市中央区のかた)」という前衛句(ですよね「現代俳句」らしい)について、
「夏井さんが『蜜蜂と遠雷』についてひと言も触れなかったこと」について、
「この句は明らかにそれを踏まえているのだから指摘すべきだった」と、
手厳しい懐疑を述べているのです。
(いいなあこの「上から目線」、「上からマリコ(AKB48)」( `ー´)ノ。)


テキストで確認しましたが、
夏井さんは「なんと不思議な感覚でしょう。」という御言葉の後、
一見して的外れ(失礼m(__)m)のような「寸評」ですね・・・。


う~んんんんん。

これは難しいぞ・・・、
確かに本当にそうなのでしょうか。
夏井さんは知らなかった(気付かなかった)のでしょうか!?
そして念のため「(直木賞受賞作のタイトルを)踏まえているかも知れませんね」ぐらいは、
言っておくべきだったのでしょうか・・・。


これと対照的に・・・、
同じく第一席句、
「遠雷や花屋はみづうみの匂ひ(岐阜県本巣市のかた)」では、
夏井さんは石田破郷(俳人・石田郷子さんの父親が師事した著名俳人⇒踏まえておかないとね)の、
〈あえかなる薔薇撰(ばらえ)りをれば春の雷(らい)〉に触れています。
(これはこれで又 季節や印象・雰囲気からして強引のようにも思えるけど…)

むむむむむ~ん。
月に代わっておしおきムーン(=_=)・・・。


「遠雷」は夏の季語で、
「雷」が主だとすれば「副題」(子季語)と言います。
 「三夏」と称して夏じゅうずっと使えます。
他にも神鳴/いかづち/はたた神/鳴神/落雷/来火/雷鳴/雷声/日雷/雷雨/雷響などがあります。 



ただね・・・、
万知万能(造語:ばんちばんのう)であることは不可能ですからね当然。


蛇足なのか発見なのか・・・、
こういうことです。
以下は「歳時記」より。

蜂・・・ 三春
足長蜂/熊蜂/地蜂/土蜂/穴蜂/似我蜂/山蜂/花蜂/蜜蜂/徳利蜂/鼈甲蜂/姫蜂/黄蜂/小花蜂/雀蜂/黒雀蜂/女王蜂/雄蜂/働蜂/蜂飼ふ/蜂の剣/蜂の針
・・・すべて「春」


「蜜」で留めておかないと、
「蜜蜂」では春夏の季重なりになってしまうのです実は。


お分かりのように・・・、
恩田陸さんは、
「蜜蜂と遠雷」で、
「春から夏にかけて」の「国際ピアノコンクールに向けての」、
「温かくも熱い闘い」を意図していたのでしょう。


だからこそ、
あの『蜜蜂と遠雷』最終頁が心に響くのです。
それは、
若きピアニスト情熱家(蜜蜂)たちの、
遠くて近い輝かしき未来(遠雷)に向けての、
厳粛なる里程標(道しるべ)に他ならないのです。

NPには一つひとつのコンクール結果が、
それぞれ蜜蜂たちの貴い勲章であり墓標であり・・・のようにも思えます。

一芸の至高を目指すことはかくも尊く痛ましいもの(必ず当落があるわけですからね)、
・・・そう思えます(だから受賞の報は万感ですね\(^o^)/)。


それに比べれば・・・、
NP宏川の諸行の、
何とお気楽なことかと(^^)/・・・。
(ピアノは初心者のまま)


でまあ結論ですが、
そうしたことも背景として考えれば・・・、
やはり夏井さんの慧眼*には感服すること多いわけです。
(今、一冊読んでいますからね、読了すればあらためてオマージュを…。)



*慧眼(けいがん)・・・
物事の本質を鋭く見抜く力。炯眼 (けいがん) 。「慧眼の士」→慧眼 (えげん) 
類語:眼力・ 眼光・ 心眼・ 達眼
[goo辞書より]
〔「明らかな目」の意〕ごまかしや秘密などを許さぬ、鋭い眼力。
(新明解国語辞典・第七版より)