まずは俳句ではなく食の話題として、
先日の「じゃがいもQ」再録と、
解答です。

Q0
「じゃがいも」の意味を持つ「ばれいしょ」を漢字で書いて下さい。
(漢検準1級)
A0
馬鈴薯

Q1
季語としての「新じゃが」はいつですか?
A1
夏(初夏)

Q2
では季語としての「じゃがいも」はいつですか?
A2
秋(初秋)

Q3
おまけに季語としての「じゃがいもの花」はいつですか?
夏(初夏)

Q番外編
「さつまいも」の意味を持つ「かんしょ」(これも漢検準1級)を漢字で書いて下さい。
(じゃがいも&さつまいも…同じ季節の季語です。)
A番外編
甘藷

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では肝心の標題「初心俳句講座」ですが、
今回は昨朝「徒然草」に興じていたことで丸一日遅れになります。
今後は毎週日曜日午前にシリーズで記して行きますので御愛読下さい。


上記「じゃがいも」の例に顕著なように、
「新じゃが」はもう早生(わせ)が店頭に並び始めていますが、
季語・季節としては夏です。
おそらく現在では早い方が商品価値が高いのでしょうか、
じゃがいもの花も五月頃だとは思うのですが・・・、
「春じゃがいも」と「秋じゃがいも」があって、
前者が普通は「新じゃが」として五月頃収穫となります。
後者は温かい地方に適していて十二月頃収穫となります。


はてな?
今のように「鹿児島産の新じゃが」が二月店頭にあるのは、
どちらでもないですよね。

このように・・・、
「食の旬」を盛り込むのも「俳句の醍醐味」のはずなのですが、
最早、
十二月に「売上げ最盛期(クリスマスケーキ等)」を迎える、
「苺」(本来は初夏)を例に挙げるまでもなく、
本当にズレ切っています。

「ホトトギス系俳句」は「季題」つまり、
「季語の季節」最重視の作句という理念(季語を愛でよ)のようですが、
その季語と季節の関係自体が揺れ揺れという現実があります。


だからこそ基本は、
「歳時記」(季語と代表句解説書)や、
「季寄せ」(歳時記コンパクト版)に、
徹底的にまずは倣(なら)うべきなのだろうと思われます。


季題とは
季節を愛でる
春ああ春



抽象画
高度に描く前にこそ
具象画それを的確に描け


・・・ということです。


そもそも陰陽暦(旧新暦)で、
今ちょうど一か月半のズレがあるわけですからね。
例えば本日2月26日は陰暦の1月11日、
そうです今日から睦月中旬に入るのです。
すなわち「初春の中の頃」なのです。
二十四節気「啓蟄」(けいちつ:本年は3月6日)以降に、
睦月下旬になってゆくということです。

俳句ではありませんが歌で実感してみて下さい。
西行法師が、
あの名歌で詠んだのは「如月の望月の頃」なのです。


願はくは
花の下(もと)にて春死なむ
その如月の望月の頃

(西行:『新古今集』雑下)

この歌の中の「如月の望月」(二月十五日の月)は、
今年の場合だとズバリ陽暦3月31日です。
その日に満開の桜が・・・ありますよね多分。
だから如月中旬が満開の桜の頃なんですよ。


外(と)にも出よ
触るるばかりに
春の月

(中村汀女ていじょ


これも有名な一句です、
ちょうど同じ現在の三月末に当たります。
満月の、
外の夜空にちょっと手を伸ばせば、
さわれそうなくらいに大きな大きな月に、
春爛漫を感じているのです。


月は単独では「秋」(仲秋)の季語ですが、
「〇〇の月」で色んな季節に用いることが出来ます。

これは意図的にズレを楽しむということです。