DSC_1125標題の著者・著作名は、
ドナルド・キーン*の『キーンダイアリー』・・・と読みます。

平凡社から昨年十月に刊行された、
高名な日本文学研究者のエッセイ集です。

正確には帯にもあるように、
「キーン先生と養子の誠己せいきさんの初のエッセイ集」。

教材のひとつとしている『論理エンジン上級編』の、
学年末考査範囲となっている、
「百代の過客」の関連で読んでみました。

文士や著名人や各界に広がる超絶した人脈と、
日本文学への限りなく深い愛情と造詣は、
帰化する前も後も変わらないようです。

東日本大震災への思いの丈や、
戦争反対・原発反対と平和主義の姿勢も、
感情的にではなく穏やかながら論理的明確に読み取ることが出来ます。

最高級にして上質な歴史的認識も太平洋戦争の悲惨を越えてゆきます。

そして戦後日本の実像虚像。

我々は日々一体何をしているのだろう、
情けないことにすっかり忘れてしまい、
逆に日本文化や芸能をこよなく愛する、
コロンビアン(コロンビア大名誉教授)に、
教えてもらうことになってしまったのです。
本当に切ないくらいの有り難さの極みです。

三島由紀夫にノーベル賞を与えなかったことで、
二人の作家を殺したという大岡昇平**の言葉。

この評論家から言ってもらえるととても客観化され、
あらためてその通りかも知れないと思えてきますね。

さらには本当に受賞すべきは谷崎潤一郎だったとの見解も、
なるほど然りと思えてきます何しろ御年九十五歳の超大御所。
三島・川端・大岡・谷崎全てと親交がありました。

論理エンジンに採用され、
かなりのページ数を割き、
繰り返し問われる出家観。

それと似通った精神性も、
優れた三頁ずつの随筆で、
豊かに味わい深く読んで、
「黄犬」のニュアンスも、
伝わってくるから不思議。

養子の息子さんの文章も達意のものです。

頭こうべを垂れて学ぶこと習うこと、
その実直謙虚さが大いに大事だと、
手を変え品を変え時も場所も変え、
何度も何度も波状的に語っていて、
エッセイ集かくあるべしとさえも、
教えられ諭され続けているのです。


沢田研二(反原発)とのやり取りも載っているし実に丸ごと楽しめるので、
熱烈なジュリー(沢田研二)ファンである新倉先生の奥さまに、
3月21日の彼岸に大谷本廟でお会いする時に、
プレゼントしようかしらなどと考えています。


*ドナルド・キーン(1922年6月18日 - )・・・
アメリカ合衆国出身の日本文学者・日本学者。日本文学と日本文化研究の第一人者であり、文芸評論家としても多くの著作がある。日本国籍取得後、本名を出生名の「Donald Lawrence Keene」から、カタカナ表記の「キーン ドナルド」へと改めた。通称(雅号)として漢字で鬼怒鳴門(きーん どなるど)を使う。
コロンビア大学名誉教授。日本文化を欧米へ紹介して数多くの業績があり数多くの大学や研究施設から様々な受賞経歴を持つ。称号は東京都北区名誉区民、新潟県柏崎市名誉市民、ケンブリッジ大学、東北大学、杏林大学ほかから名誉博士。賞歴には全米文芸評論家賞受賞など。勲等は勲二等。2008年に文化勲章受章。また、日本ペンクラブの名誉会員であり、2012年11月26日の日本ペンクラブ創立記念懇談会では演説を行った。
[Wikipediaより、下記も]

**大岡昇平・・・
おおおかしょうへい、1909年(明治42年)3月6日 - 1988年(昭和63年)12月25日 は、日本の小説家・評論家・フランス文学の翻訳家・研究者。
NP注:ここでの「二人」とはともに自裁した三島由紀夫と川端康成を指す。