東京五輪前コロナ・パンデミック

「コンコルド・パラダイム」

コ・パ が共通して不気味な音霊


【からっぽの棚の横には春キャベツ】



≪2012年2月14日掲載≫

成田空港にアクシデントがあり着陸できない、との旨の機内アナウンスを、旋回続けるエアカナダ機上の人として聞いていました。窓側に座っていた同僚の女性は、凄い波が海上を行くのを、皆に伝えてくれました。後で思えば多くの命を奪ったtsunamiだったのですが、その時は「意味」が分かりませんでした。意味は、後付けされた分だけ重いように思えます。理解に至るまでの「時の付加」があるからです。それは「重層性」と言えるものです。

コンコルド・パラダイム」・・・東京大学の入試小論文に出題されたことのあるテーマについて話をします。フランスの航空会社コンコルドは、自社の誇りと名誉にかけて、採算の取れそうにない新型の超音速ジェット旅客機開発と製造を続けました。途上で気づくわけです、それまでに注(つ)ぎ込んだ莫大(ばくだい)な費用を取り戻せそうもない、と。しかし同時に考えるわけです、すでに費やした金額を無駄にはできない、と。ディレンマ(=二律背反)の結論・・・「いまさら中止できない」 そうして、その外形から「怪鳥」と異名をとるコンコルドは、世界に冠(かん)たるエグゼ(上流階級)のステイタス(社会的地位・身分の保証)にもなりました。

こうした呪縛的な仕組みを、「コンコルド・パラダイム(枠組み)」「コンコルドの誤り・誤謬(ごびゅう)・錯誤」と称します。コンコルド社は完成後どんどん運航を継続し、赤字に赤字を重ねて、どうしようも無くなってからようやく撤退しました、今から9年くらい前のお話。

「年金」を掛け続ける人の心、あるいは「原発」推進者の思考が、コンコルド・パラダイムに嵌(は)まっていないことを願うばかりです。・・・破綻(はたん)は一目瞭然(りょうぜん)だが、今までに費やした貴い積み重ねゆえに、やめるわけにはいかない。これも時の付加・重層性の一種マジックであるのです。

身近なところにコンコルドが墜(お)ちていませんか?
「いまさら中止できない。」


【冬物語2012・起と承の迫間(はざま)】
 
 彼女は大震災のボランティアで東北にいる・・・三回生必須の単位を相当落として、大学を離れているらしい、そんな噂が友だちの間では広まった年度末だった。だけど、震災の影響があって、多くの他大学同様に遅れて始まった新学期のキャンパスに、何事もなかったかのように彼女が姿を見せるようになった時、みんな、そのことについては余り詮索しなかった。東京よりも揺れたはずの千葉の実家で、何かあったようには感じられた。でもそれは、文字通りの揺れがいつしか収まるように、元気ならそれでいいじゃん、命あってのものだね・そういうものだね(何か語呂が合う)ということで片付けられていった。


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≪2013年9月16日掲載≫

つばぜりあい・・・(鐔=鍔)
刀を鍔の所で打ち合わせて互いに押し合うこと。
[全く互角に激しく勝敗を争う意にも用いられる。例、「ーを演じる」]
(新明解国語辞典)

「鐔」は小林秀雄全集の『考へるヒント』所収、「真贋」(しんがん:ほんものとにせもの)シリーズとして、1962年(昭和37年)の4月「徳利と盃」(とっくりとさかずき)、5月「壺」(つぼ)に続いて6月の「芸術新潮」に発表された評論的エッセイです。

NPが言うまでも無く、暗喩的文章と解釈してよいようです。

2013年センター本試験では、大問一評論が「鐔」(先日のブログの字を訂正いたします。)、大問二小説が「地球儀」(牧野信一)と、どちらも暗喩で満ち満ちていたことになります。
結果はセンター試験国語史上、最低レベルの平均点101(200点満点:古漢100点分含む)でした。

長谷剛先生の新刊問題集「ガラッと変わる現代文」は、この難解な「鐔」問題の分かりやすい解説から入っています、大胆果敢です。

表面(表現)が「贋」、裏面(内実)が「真」とすると・・・
やはり小林秀雄の「嫌な感じ」というニュアンスを含んでいたんですね。
1962年上半期が、特にそうだったのかも知れません。

1月:ベトナム戦争でアメリカ特殊部隊結成、東ドイツが徴兵制度復活
2月:ケネディ大統領の対キューバ全面禁輸措置、東京が世界初の1000万人都市に
3月:ビルマで軍事クーデター、大正製薬が「リポビタンD」発売
4月:シアトル万国博覧会「宇宙時代の人類」、イギリスが連邦加盟国からの移民の自由条項削除
5月:ベルリンの壁に地下トンネルを掘り西側へ市民脱出、朝日放送コメディ「てなもんや三度笠」放送開始
6月:元ナチス親衛隊中佐アドルフ・アイヒマン絞首刑に、エール仏ボーイング707連続事故で死者130・113名

勇ましい時代」ですね。
10月にはキューバ危機、11月には英仏の「超音速機コンコルド共同開発合意」へと続きます。

「それまでに費やした過大な投資ゆえに今更抜け出せない破綻必定(はたんひつじょう)の束縛的枠組」
それがコンコルド・パラダイムです。
以前にも紹介説明しましたが、東京大学の入試小論文に出題されたことがあります。

だから、小林秀雄の「勇ましいものはいつでも滑稽だ」は、蓋(けだ)し名言なり、と思えてなりません。
もちろん、冷笑してばかりはいられません。

今がそうなのですから・・・。
勇ましいものはいつでも嫌な感じだ・・・と置き換えて考えれば正着です。

大雨・洪水・暴風警報の東大阪です。
京都 滋賀には特別警報が発令されています。

「大本営発表・・・」というラジオ臨時ニュースの場面(「少年H」1941年12月8日)が頭を過(よ)ぎります。

「真贋」を見極める「心眼」を持ちたいと思います。