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[画像表紙は再掲
    最下方に裏表紙]
著者第三句集 奥付の発行は
令和二年九月四日ですから
四か月前の初刊になります。

歌枕(句枕?):和歌に詠みこまれる名所・旧跡
… というわけではなく「地名」の盛り込まれた
句を列挙して地名の持つ効果と意味合いを考察。


〔近江住まひ〕
つかのまを近江住まひや遠砧
比良比叡二月の雲を同じうし
逢坂山抜けて近江の涼しさに

〔ただいま〕
堺にて長く患ひ鶏頭花


〔琉空〕
鎌倉へ馳せ参じたる極暑かな
大阪の今日の薄暑に帰省せし

〔尼崎〕
大阪の暑さや亀とおかん居て
大宰府に待つと言づて月の友

〔胡桃〕
六甲へ野分の草のなびきけり

〔長崎くんち〕(神戸へ転居)
淡路島みて将棋さす日永かな
長崎の坂登高といふべかり


〔伊丹十三記念館〕(松山)
汗もよき伊丹十三記念館

〔マリー・ベル〕
貝寄風や湾の向かうに紀伊の山
大阪にいつもの雲や夏来たる

〔拓磨〕
大人には東京弁を冬帽子


〔大津へ〕
帰省してにはかに津軽訛りかな
近江には山また多し炉火恋し

〔星宿〕
大阪にこんなに雪がお正月
飯炊きに能登より来しと雪解川
渡来人歴史館まで月の客


全章立てから一句以上
全ニ十句を挙げさせて
いただきました… 他に
も地名句は多くあり…。
(一部「詞書」割愛あり
ご容赦をくださいませ)

前回までは「二句」に外延(具体例)を
絞って「句集を読む」シリーズ展開
を図っていたのですが… このかたの
あとがきにある「(夫君の)転勤暮らし
で、横浜から尼崎、神戸、大津と引越
し…」と「人は心のなかに物語がある」
という御友人のことばの援用を読むと
… これだけの句以上の物語が随所各所
あったのだろうと感じ入っております
(勉強不足の恣意的な感想ばかりです)。


意外に思ったのは「大阪の句」です
上掲だけでも四句あります… NPは
雲の句が好きですので… やはりこの
一句が(おこがましくも)得心です…。

大阪にいつもの雲や夏来たる

裏帯に「自選十句」として挙げていらっしゃる
ので… ほっとしました… 又お逢いできますよう
「琵琶行」(白楽天=白居易の唐詩)についてや
大阪素材・神戸素材など(厚かましくも)語らせ
ていただきたく思っております… 俳句甲子園・
関西オープン彦根大会で「港を出る舟」のこと
描いた生徒句を愛でていただいて… その女生徒
は飛躍的に伸びたこと今でも感謝しております。

外延を「概念の範囲に含まれる属性」と捉えれば
対語は「内包」となります… 内包とは抽象化した
「性質」ということ… 如月俳人の場合の「内包」
とは「句集を読む②」で一度述べさせて戴きまし
が… 母なる港のような懐深きものではないかと…
(「序」で安部元気氏は「俳句という形式が担っ
ている本質を、著者自身が体現している」と…)。

タイトル「琵琶行」の持つ郷愁・旅愁のイメージ
(それは杜甫にも通じ)はあくまでも人の世の定め
のような普遍的なもので著者個人を特定しない…
そんな思いにさせていただいたことです… 堪能。


それにつけても「著者略歴」にある“ 東京生れ、
六歳ごろから作句を始める ”には恐れ入ります
「アンファンテリブル」(石井みや氏の「跋」
文中の語で「恐るべき子どもたち」)のままに
「恐るべき大人たち」の最たる俳人になられた
のでは… と拝察し御恵贈に与り感謝の極みです
(美しく心に絡みつく蔦の表紙は著者御画見事)。


【出る港ありて帰るや初暦】

【初夢にクルーズ船のキャビネット】


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