『金環蝕』は、太平洋戦争の戦前から戦後にかけて活躍した石川達三の政治小説(昭和41年)です。福井県の九頭竜(くずりゅう)ダム建設に纏(まつ)わるゼネコン汚職事件を元に描いたもの。標題(タイトル)は「暗喩」ですね。「一見綺麗に覆(おお)い被(かぶ)さるように幾何学的に腐蝕(ふしょく)され」、そして「周縁(しゅうえん)が悲壮(ひそう)な鮮やかさで紋様(もんよう)を露呈(ろてい)している」・・・政治家である以前に人である、彼らの生き様の凄絶(せいぜつ・たとえようもなくすさまじい様子)さを示しているのでしょう。・・・たとえようは、あるものですね。

「蒼氓(そうぼう)・・・人民の意の漢語的表現」
これは、第一回芥川賞(昭和10年)を受賞した石川達三の作品名です。ブラジル移民団の悲惨を集団的な手法で描いたもの。デビュー時から社会派だったんですね。第一回芥川賞の候補には、他に高見順・太宰治・外村繁などの錚々(そうそう)たる顔ぶれが挙(あ)がっています。余り「灰汁(あく)が強い」=他人にはやや抵抗が感じられる強い個性の=ものを選んで賞の方向性を決めつけたくなかった選考者たち([出席者]久米正雄・佐藤春夫・室生犀星・瀧井孝作・小島政二郎・横光利一・菊池寛・佐佐木茂索。[欠席者]は川端康成・谷崎潤一郎・山本有三、すごいお歴歴ですね)の意向が反映したとも言われています。確か川端康成は、この時に太宰の怨・恨(うら)みを買ったんですね。

「蒼氓」というタイトルの見事さを褒(ほ)めているブログを今回見つけました。そのかたは、山下達郎さんに同名の名曲があるとしています、想い出しながら、あらためて聴いてみます。CMソングでした。

(歌詞の一節)

限りない命のすきまを
やさしさは流れて行くもの
生き続ける事の意味
誰よりも待ち望んでいたい


もう、全国各地でいろんなイベントが始まっているのでしょうか、金環日食(金環日蝕=金環蝕とも表記)の日の朝。6時17分には欠け出して、7時30分ジャストに絶景とか。
曇り空に蒼(あお)い色が交錯(こうさく)している大阪東部です。

「蒼穹」という名の同人誌を学生時代に刊行していたことがあります。
Nくん、Yくん、Oくん・・・・・・元気かなあ。

そうきゅう、「穹」は弓形になっている意、あおぞらの意の漢語的表現・・・今日の意味調べは、すべて、前日の「三省堂・新明解国語辞典」によるものです。