NPブログ「Leitmotiv 」言葉・論理・主題連鎖への旅

カテゴリ:美術・絵画 > 漫画・アニメ

芥川龍之介は1927(S2)年7月24日の未明に、
睡眠薬の過剰摂取により他界しています…
妻(文)と子(男子3名)を遺して満35歳でした。


論友か論敵か谷崎潤一郎の誕生日でもあって、
とかく噂が立ちましたが谷崎は神戸から上京。


芥川はその日に向けて睡眠薬摂取量を増やし、
普段からフラフラしていたとの内田百閒説は、
「東京の夏が暑かったから」と… シンプルで。


昭和二年四月発表の「食物として」… 超短編
エッセイが青空文庫に遺っていて、全文転載。


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食物として  芥川龍之介

 金沢の方言によれば「うまさうな」と云ふの
は「肥つた」と云ふことである。例へば肥つた
人を見ると、あの人はうまさうな人だなどとも
云ふらしい。この方言は一寸食人種の使ふ言葉
じみてゐて愉快である。
 僕はこの方言を思ひ出すたびに、自然と僕の
友達を食物として、見るやうになつてゐる。
 里見弴(とん)君などは皮造りの刺身にしたら
ば、きつと、うまいのに違ひない。菊池君も、
あの鼻などを椎茸と一緒に煮てくへば、脂ぎつ
てゐて、うまいだらう。
 谷崎潤一郎君は西洋酒で煮てくへば飛び切り
に、うまいことは確かである。
 北原白秋君のビフテキも、やはり、うまいの
に違ひない。宇野浩二君がロオスト・ビフに適
してゐることは、前にも何かの次手(ついで)に
書いておいた。佐佐木茂索君は串に通して、白
やきにするのに適してゐる。
 室生犀星君はこれは――今僕の前に坐つてゐ
るから、甚だ相済まないけれども――干物にし
て食ふより仕方がない。然し、室生君は、さだ
めしこの室生君自身の干物を珍重して食べるこ
とだらう。


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気楽に「きのう何食べた?」と訊いてみる時、
芥川的には、「きのう誰と会った(話した)?」
となり、その「食物は人物」のメタファです
… 西洋酒で煮ても喰えなかった谷崎潤一郎?


未明から芥川の食にまつわる噺をあれこれと
読んでいる早朝に、はたと気付いたことです。

「きのう何食べた?」は「きのう何読んだ?」
「きのう誰に会った?」に置き換えられます、
『きのう何食べた?』コミックス本の含蓄も
また、かくの如きアレゴリーで考えると情趣。


下掲最新刊は丁度二か月前に発売されたもの
で、自称「何食べ伝道師」のかたからの賜物
… 作ったりはしませんが掲載レシピも楽しみ。

シロさんケンジくんというダブル主人公二人
の成熟円熟の心温まる物語としてもう21巻目。

… 初読からじっくり再読三読と観点をかえて、
ゆっくり季節の流れのなかで「食物として」
登場人物をみるのも「うまいのに違いない」。


【シロ葱をケンちん汁に合わせ食べ】


【河童忌に仕事準備の小確幸】


【きのう日本料理食べたよ夏期講習】


【夏空にLGBT溶け込んで】


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退職校の閉架に眠る


父が亡くなった八年前、当時在職の中高一貫校
図書館(メディアホールと呼ばれていました)に、
父所蔵の時代・歴史・経済小説などの文庫本と
共に、NP所有の標題本も合わせて寄贈しました。

ベテラン司書さん(NPよりも早く定年退職)が、
人気漫画本の散逸を惜しみ、丁寧に取り扱い
閉架式に入れてくださった記憶が甦りますが、
全七巻を今また読み直してみたくなりました。


今年の一月下旬の刊行ですから、今度は母の
逝去に伴って、何も手につかないような状況
続いた頃の、朝日新聞社からの話題の一冊を、
地元ジュンク堂の「児童書」の一角に発見。

『 危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』』

この本を検索ヒットさせたのは、鈴木涼美さん
(慶應義塾大学・環境情報学部卒で芥川賞候補
に二回ノミネートの注目作家)からで、評論の
教材文章を探していての嬉しい巡り合いです。

多様な論客・作家たちが切り口鮮やかに「危機」
の「生きる羅針盤」を示してくれますが、特に
巻頭の鈴木敏夫さん(ジブリ・プロデューサー)
「宮さん」(漫画家の宮崎駿さん)論に瞠目です。

川上弘美さん、竹宮惠子さんも楽しみに週明け
一日二日じわじわ読んで、小論文修業中の学徒
にプレゼントすることにしますが、アニメ映画
と原作漫画とはかなりの異世界なのはご存知?


【黒南風の世界の風の谷に住む】


くろはえ、とは梅雨初め頃の湿っぽく
どんよりとした南風で、仲夏の季語。
荒南風(あらはえ)は、梅雨半ばの激雨
につながる南風で同じく仲夏の季語。
白南風(しろはえ)は梅雨明けの晴天に
吹く南風のことで、晩夏の季語です。


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昨日は家庭教師の仕事帰りにいつもの蕎麦屋さん
に寄り出雲磯海苔と生姜の出雲そばを戴きました
… 蕎麦茶にそば焼酎の蕎麦湯割りという蕎麦三昧
こ、こ、これは旨い、やみつきになりそう磯海苔。

日曜日の夕刻でしたから所謂あのシンドロームが
近づいていました… かつ何げなく選んだメニュー
「イソノリ」…ピンと来て帰宅後の行動はひとつ。


久しぶりに「サザエさん」三本フルにリアル鑑賞
… さすがたかこ さんの声を聞きたくなったのです
タラちゃんを放映開始から53年間演じられました。

87歳でのご逝去ですからNP亡き母とほぼ同世代…
フグ田タラオは貴家堂子さんのメトニミー(換喩)
でもあったのだと思いながらひとつひとつを拝聴。

1話終了後に追悼テロップはありましたが…収録分
はまだあるようで少し安堵しました…放映開始から
ずっと同一なのはサザエさん役だけになりました。

"貴家ちゃんがいるうちは私も頑張らなきゃ"と思っ
いたので貴家ちゃんがいなくなって本当に寂しく
悲しい気持ちです… とコメントの加藤みどりさん。


にわかタラちゃんファンと言われてもいいので…
同一役の継続声優ギネスブック入りしている貴家
さん永遠の3歳児「好奇心旺盛」のメタファ(隠喩)
の声々を偲んで…哀悼と敬意を表したいと思います。


【タラちゃんに春が来たよと伝えたい】


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『戦争は女の顔をしていない』二作品

すごい

月並ですがどちらにもその言葉でしか言えず。


スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさんは
ベラルーシの2015年ノーベル文学賞受賞作家
… 正確には史上初のジャーナリスト作家です。

1948年ウクライナ生まれ…1939年のドイツ軍
ポーランド侵攻で始まった第二次世界大戦の   
「ソ連従軍女性」をこれほど迄に「聞き取り」
で克明に発掘した偉業にまず圧倒されます。


そして初版は二年半前になる漫画本の作画は
小梅けいと さんで第50回日本漫画家協会賞
受賞…「漫画化した作者の蛮勇にも脱帽する」
と第1巻の帯で原作者と共に讃えられています。

「この本は理解するためのものではありません。
理解していないことを知るための本です。そう
簡単にわかってたまるものではないのです。」
…第2巻の帯裏に監修者のことばがあります。


ごめんなさい…標題と冒頭語は間違いです
すごいではなくて…すさまじく いたましく 
「美しくも切なく強靭」(富野由悠季アニメ
監督) … 原作にも漫画にも「瞠目」は同感。


買っただけ、持っているだけ、読んだだけ…
そうならないように意を決して「薦めます」
…今こそ「戦争反対」と思うだけ、言うだけ
では危うい時代の到来に他ならないのです。


【蟷螂の斧 戦争に振り翳(かざ)す】


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ずっと携行してじわじわ楽しんでいる大事な
一冊に『きのう何食べた?』(モーニングKC)
があります… 最新刊第19巻で 原作は『大奥』
でも知られる よしながふみさん …ちょうど今
ロードショーも西島秀俊さん内野聖陽さんで
絶賛好評… NPもこの作品を「何食べ伝道師」
を自任するかたと愉しく鑑賞したことです。

映画も勿論すばらしく…解説などよりも体感
すれば伝わるこの原作漫画のよさは…まさに
何杯も「おかわり」の欲しくなる美味しさ…
季節や年齢を重ねて生きてゆく移ろいゆく…
人と人の優しさあたたかさが まるで 季語の
冬日のように こころにさしてくるのです。☀️


【何食べた?言ってみたくて息白し】


☀️標題句の「冬日」・・・
「ふゆひ」とも「ふゆび」とも読みます…
天気予報で耳にする「冬日」は1日の最低 
気温が0℃未満の日ですから、「冬の1日」
のことです。一方「天文」ジャンル 季語
としての「冬日」は、冬の太陽そのもの、
またはその日差しを指します(イントネー
ションも違います)。[style.nikkei.com]


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